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「お兄さん、本当に色々とありがとうございます……私なんかを……私なんかに」
「止めましょう。野暮な事は言いっこなしです。今夜は楽しんで下さい」
「はい……あのそれでも言わせて欲しいくて」
ん?
「本当にありがとうございました――――!!」
今までにないくらいの大きな声、本当真っ直ぐな子だな。なんだかトルテらしいなと思ってしまった。
新しい仲間……ですか。
「少し話をしましょうか。トルテの事を聞かせて下さい。昔の事とかなんでもいいですから」
「私のお話ですか!?そ、そんな面白いお話はありませんよ!?」
両手を突き出し否定するように左右に振り慌てだした。
「なんでもいいんですよ。ただ知りたいと思っただけですから。そうだ、アリスとはどうやって知り合ったんですか?」
「アリスちゃん?えーと、それはですね……」
笑顔が……いや、自然な笑顔が戻ったトルテが私の言葉に反応して楽しそうに話してくれる。
彼女の心からの笑顔を見て、ふと思う。アレンが料理店を開いて皆を笑顔にしたいと言っていた事。
それはお客さんだけではなく、一緒に働く仲間に対してもそうなんじゃないだろうかと。
返ってくる筈もない答えだが、私はそう言うお店にしたいと彼女の笑顔を見て思った。
準備が終わる騒がしい時間までの合間の静かな時間は、こうしてゆっくりと過ぎていく。
そんな優しい時間――
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