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「止めてくれなかったんですか……?」
堪らず恨めしい目をランに向ける。
……だって、本当に本当にやば過ぎる。
昔はサバイバルをしていたので、胃や舌はかなり鍛えられていた筈だった。それなのにそんな自信は簡単に打ち砕かれた程に凄い料理だから……
「いやぁ……なんかドルチェに対抗心メラメラ燃やしとって、止めれんかったわ」
「そうなんですか……ハハハ」
「そうなんよぉ!ハハハ」
「「アハハハハハハ」」
顔を見合わせ、二人の白々しい笑いが重なる。部屋の中は二人の笑い声だけが響く。
……………………
「ほな!うち用事あるから!!」
ランが物凄いスピードで部屋から出ようと走りだす……その直前にガシッと腕を掴んだ。
こちらを振り返りランは口元を引き攣らせ、一筋の汗をたらりと流す。
「一人だけ逃がしませ……ごふん!げふん!……いや、ランには迷惑かけましたし、今から一緒に食事でもどうですか?」
咳ばらいをしつつ、素敵な食事にお誘いをする。そう……とても素敵なお食事に――
「ハハハ……じゃあ日を改めて誘ってもらえると、ランちゃん嬉しいなぁ……なんて」
「いえいえ。全く遠慮なんかしないで下さいよ。嫌ですねぇ、私とランの仲じゃないですか。もうすぐ料理が来ますから……フフ」
一人でも道連れを増やそうと必死になる。一人より二人の方が食べる量も減る筈だ。
「嫌ーー!離してぇぇぇ!!うちまだ死にたないーー!!」
「あの世で一緒に勇者亭を天国一にしましょう!」
「ヒューイは絶対地獄行きやぁぁぁぁぁ!」
二人の騒がしいやり取りに我関せずと、部屋の扉が前触れもなく静かにギィィッと開いた。
「「ヒッ……!?」」
思わず二人して抱き合う形になる。もちろん恋慕の情からではなく、恐怖からに決まっている。
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