おいでませ勇者亭のお話

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ランは片眉を吊り上げながらも無言でベットに腰掛け、膝にロコモコを置いて箸を持つ。 姑さんがお掃除チェックでもしてるかのように念入りにじっくりと舐めるように見回した後、ハンバーグを口に運びもぐもぐと咀嚼する。 「……絶対マズイとこ見つけたるからな」 食べながらも器用に喋る、陰湿クレーマーと化したランの目がくわっ!と勢いよく見開いた。 「……って美味っ!!なんやこれ……ソースの味付けが完璧や……冷たい酸味のあるトマトのソースが、食欲を掻き立てよる!しかも、ハンバーグの中にチーズが入ってて、めちゃめちゃとろけるわぁ。後細かく切った軟骨も少しだけ入ってて、食感も面白い……まさに、まさに!ハンバーグの玩具箱やぁぁぁぁ!!」 ランは世界に轟け!とばかりに一気に叫んだ。背景に雷鳴が響き、雷光で埋め尽くされそうな勢いの驚愕の咆哮。 「ドルチェ、ご飯おかわりお願いします」 「……イエス、マスター。たんと食べて下さい」 ドルチェは私の食べっぷりに満足そうに頷き、しゃもじ片手におかわりご飯を用意してくれる。 「……って聞いてないんかい!!」 すっかりツッコミ女になっているラン。ツッコミ役がいなかった二人にとって、彼女は適材適所である。 「くっ……さっきから冷たくしよってからに!……べ…別に嫌やないけど……それにしてもドルチェは、フェイ料理長クラスの腕やで。発想はヒューイ並やし」 「……当然です」 ドルチェが胸を張って言う。んー、ランに妙な対抗意識を持っているような気がするのは、私の気のせいだろうか。 「ドルチェの腕は、私も驚かされましたからねぇ。これで、もし魔術が使えれば完璧ですよ」 「んーうちなんか、ウズウズしてきたわぁ……うちの腕も一から鍛え直さなあかんわ」 実に楽しそうにそう呟いたランは、瞳にやる気の炎を灯らせ物凄いスピードでロコモコを食べ終えた。なんだか見てるこっちが気持ちいい程の食べっぷり。
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