おいでませ勇者亭のお話

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「魔術をですか?」 「マスターは、私に魔術が出来れば完璧だと言いました。私も魔術が使えればと思いまして」 魔術……?とりあえず過去の大戦でゴーレムが魔術を使っていたという前例は、聞いたことがない。 ドルチェのコアが魔力を半永久的に魔力を精製するというなら、魔力と詠唱を媒介にして魔術は放たれるのだから理論上は可能だろう。 ドルチェはコアの魔力を原動力として動いているらしいので、恐らくドルチェの持つ尋常じゃない力も、強大な魔力を常に体内に巡らせているから生まれるものだと推測している。 魔力を体外に放出しすぎると、魔力が精製されるまで力が低下するとは思う……最悪体が動かなくなる。 魔力が空になった状態から今の状態に戻るまで、どれくらいかかるかは試してみないと分からないが、まあ…… 「可能だと思います。ただ、ゴーレムに魔術が効かないというのは本当ですか?」 「はい」 「その理由によっては、魔術を使うのに問題が出てきます。一度試しに魔術をかけてもいいですか?」 抑え切れずにワクワクしながら瞳を好奇心で、子供のように無邪気に輝かせる。 「…………」 ドルチェは無言で指を突き出し、私の額にそっと近付けてくる。無防備な私の額に向けてドゴンッ!というデコピンではありえない音がする、ドルチェの必殺技の一つ『デコピン~冥土へGO~』が炸裂した。 ギャーーーー!と叫びながら額を押さえて床を転げ回る。痛い!痛過ぎるぅぅ!あまりの事態に思わずテンプレート過ぎる悲鳴が出てしまう。
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