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意識が混濁する中ぼんやりと情景が浮かび、少しだけ鮮明になる。頭の中が霞みがかったようにはっきりとしない。
深緑の木々に囲まれ物静かで、どこかの森か山かと『認識』すると、獣の鳴き声や風に揺れる草木の音だけが聞こえてきた。
ああ、どこだここは……夢見心地でふわふわとした地に足がついていないような不安定な感覚。
『準備はいいのか?』
その言葉が耳に留まり、目の前に誰かがいるのに気付いた。
髭面で髪をオールバックにした三十代半ばくらいの男がいた。彫りが深く目つきが鋭いので恐そうに見える。筋肉質な体格なのが遠目からでも分かる程だ。
フェイさん?
『俺を雇いたければ剣で認めさせてみろ』
この言葉には覚えがある。
昔聞いた言葉。彼が、うちの料理長のフェイさんが出した条件。
これは夢――過去の記憶の再生。
ああ、懐かしいな。このまま記憶の波に飲まれてみるのもいいかも知れない。
過去の自分を見つめ直す為に。
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