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「プレステ買っちゃった、でもそれだけでお金がなくなってソフトは無いの…」
ソフトが無いと言った彼女の瞳にはうっすらと涙が光っていた…
それもそのはず、
プレステのソフトなど最初からなかったのだ。
プレステが流行っていたのは約九十年前…
時はまさに世紀末!
光化学スモッグによって電子機器が全て使えなくなってしまう少し前の時代!
「ソフトがないなら、創ればいいのさ!なぁ?」
男はにやり、とわらって彼女の肩に手をおく。
そう、
男は失われた機械技術を巧みに操る機工士の一人で、現在では禁忌とされている機工学と生体融合で反吐のでるような実験を繰り返す集団の幹部であった。
そして、彼女はその最初の、完成品……
蒼白で透き通ってしまいそうな肌に、肩まで届きそうな髪が夜風に揺れている。
とても人工的に作られたとは思えない彼女の瞳は月に照らされて青く瞬いていた。
周りには
崩れて鉄骨が剥き出しになっているコンクリート。
細い管や鉄板が複雑に絡みあっている鉄の塊…機械は動きそうな気配はない。
そんな月夜の瓦礫の山で二人は腰をおろして、火を焚いていた。
これから起こる事態によって電子機器は姿を消すのである。
電子が世界に通わなくなると、それまで機器に頼っていた人類は大混乱に陥った。
電波による放送が出来なくなり。
車、飛行機、電車は動かなくなった。
通信手段のなくなった人類に、最後の追い撃ちのように機械によって制御されていた原子炉の臨界。
札束は紙くずになり、人類に限らず多くの命が失われていった。
残された人々に選択の道はそう多くはなかった…。
放射能によって大気は汚染されたのだ…
祈りは
天に届かず川は苦い毒の水を吐き続ける…
赤子は異様な姿で生まれてきた…
それでも
生命は生きようともがき続けた…
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