3351人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
どろりと暗い闇の中、冷たい何かに包まれているような、拘束されているような異様な感覚。
――またあの夢……
その感覚が、いつもの“アレ”を見る兆候。
――もう…嫌なのに…
何度も何度も見たせいで見慣れてしまった、時代劇に出てくるような光景が視界いっぱいに広がった。
目の前に刀を握った侍の男達が立ち、こちらを睨みつけて来る。
――何度目だっけ。
私はたった一人で複数の男達と対峙してる。
……いやこれは夢なのだから、“私”というのは語弊かもしれない。
私は複数の男達と対峙している人物の目を通して、それを見ているのだ。
“私”は此方に向かって何かを言い始めた男達を見つめたまま、ピクリとも動かなかった。
―――不意に、“私”が腰を落とす。
気付いたときには男達の前に移動していて、そのまま手に握った刀で呆然としている男達の一人を斬った。
続けてもう一人。
更に、一人。
男達は手に刀を握っているにも関わらず、攻撃する間もなく死んでいく。
それ程に彼らを斬り伏せる“私”は強く迅速だった。
最初のコメントを投稿しよう!