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――早く目が覚めればいいのに…!
夢だからか目を瞑る事は出来ない。私は視界いっぱいに鮮血が飛び散る惨劇を、殺す側の視点から見つめた。
人を殺す、それもまるで自分が殺しているように錯覚してしまいそうな夢を見るなんて、耐えきれるものではない。
――怖い…やめて…
しかしそんな内心の悲鳴も虚しく、残酷な夢は続いていった。
――早く終わってよ…
地に転がっている死体は生々しく、見開かれたままの目は私を睨みつけているようで凄く怖かった。
手に持った刀は赤く染めあがり、切っ先から血がポタポタと垂れて地面に斑点を作っている。
――早く…早くっ!!
いつもこの夢は刀を拭いた後、鞘に刃をしまって終わっていた。それで私は目を覚ますのだ。
恐怖心でいっぱいの私は視界を通している人が刀を拭い始めたのを見つめながら、夢が早く終わるのを強く願った。
――これで…
刀を拭い鞘にしまう。次いで、視界が揺れた。
――えっ、な、何で!?
私は夢に続きがあることに動揺した。
驚いている間にも夢は進み、片手が口元に宛がわれたと思ったら間を置かずに目が閉じられる。
状況が分からなくなった私は真っ暗な闇に息を詰めた。
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