━ 初恋 ━

9/9
2718人が本棚に入れています
本棚に追加
/150ページ
  なんか、信じられない。 こんなに素敵な人を女の子たちが放っておくわけないもの。 「楓が初恋なんだから、初キスだよ」 「……本当にー?」 意地悪っぽく聞いた。 「ホント!──あ、忘れてた! キスしたことあったよ」 (ほらね。そうだよね、やっぱり……) わたしはちょっとうなだれて、都賀くんの首のほくろを見ていた。 「史彰と」 「──」 「あいつのは、すんげぇ濃厚! 吸盤みたいに吸い付くし、舐め回すし、テクニック仕込まれた!」 「やだぁ──」 史彰くんの可愛くて濃厚なキスを想像して思わず笑ってしまう。 「俺、楓とキスできるなんて思ってなかった。 こんな近くで楓のこと見ていられる……。すごい嬉しい」 「わたしのセリフ取らないで!」 都賀くんは本当に楽しそうに笑った。 わたしもその笑顔につられてクスクス笑い続けた。 「楓。俺のことも名前で呼んで」 「え……? なんて呼べばいいの?」 「まかせるよ。直ちゃん以外で」 「えー、困る。 ナオちゃんがよかったな。どうしよ……ナオ? ナオ……くん付けてもいい?」 「んー、しようがない。いいよ」 「じゃあ、直くん」 「1日も早く、くんがなくなることを願ってます」   そう言った都賀くんの手のひらが、優しく私の髪に触れた。  
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!