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その夜は『ねこじゃらし』のカウンターで、史彰くんと並んで夕飯をご馳走になった。
源治さんと都賀くんが肩を並べて作業する姿を初めて見た。
(仲のいい親子っていいなぁ……)
そうしみじみ思った。
言葉を交わさなくても、2人の呼吸が自然に合う。
お互いを分かりあえているからこその優しい空気感。
わたしは飽きることなく、2人の仕事ぶりを眺めていた。
接客する時の都賀くんの笑顔は、とても素敵だった。
顔は似てないのに、やっぱりどことなく源治さんの笑顔と印象が重なる。
忙しい合間にわたしを気にかけて、笑いかけてくれる都賀くん。
そのたびに、わたしの心は温かく満たされた。
食事が済んだあと、都賀くんの仕事が終わるのを史彰くんと2階の部屋で待っていた。
「これ、お父ちゃんに買ってもらったの。
お姉ちゃんみたいに上手になるんだ、ぼく」
史彰くんは真新しいスケッチブックと36色のクレヨンをわたしに見せて、得意げに胸を張った。
「よかったね!
いっぱい描けば上手になるよ」
「うんっ!」
史彰くんがスケッチブックを開いたとき、階段を上がってくる音が聞こえてきた。
わたしたちは揃ってそっちを振り向く。
都賀くんがコーヒーを運んできてくれた。
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