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横から凄い力で殴られた、ということは何となく理解した。
痛みは不思議と無い。今自分が感じているのは浮遊感だけだ。
スローモーションで流れていく風景を眺めながら思う。
(……俺は、死ぬのか……?)
何かに打ち付けられる感覚。
そのままゴロゴロと何メートルも転がる。
だけどやっぱり痛みは無くて、それが何となく可笑しかった。
「……………!!」
遠くで緋暮が何かを叫んでるけど、何て言っているのか聞こえない。
(……なんだよ緋暮。…聞こえないよ。)
そう言ようとしたけど思うように口が動かない。
そうこうしてる間にも緋暮の表情はどんどん曇っていく。
整った顔をクシャクシャにして、大きな瞳から涙を流して。何かを叫んでる。
(……だから聞こえないって。…それより…泣くなよ。笑えって。お前はそっちの方が似合ってるよ………。)
そして唐突に意識がシャットダウンする。
最後に見たのは、黒い炎の化け物が、その存在を爆発させ絢香に腕をのばすところだった。
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