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…お…き……おき…て…
「…う…う~ん?」
……おき………………………………。
「いい加減に起きなさぁーいっ!!」
「う、うぉあぁ!?」
怒号と共に布団を剥ぎ取られ、高村蒼志(たかむらそうし)の意識は否応無しに覚醒していく。
「…なんだ碧維(あおい)かぁ…。」
「「なんだ碧維かぁ」……じゃないっ!!はやく起きないと学園に遅刻しちゃうよ?」
「げっ!!マジか!?」
急いで時計を確認すると朝の8時を少し回っていた。蒼志の通う彩華学園は8時30分には校門を閉めて、それ以降の登校はどんな理由があっても遅刻になるのだ。加えて高村宅から学園までは走っても20分はかかる。
「やべ、ホントに時間ないし」
急いで支度に取り掛かる。机の上にある鞄に今日必要な教科書を選び乱暴に中に叩き込む。
「もう、教科書ぐらい前の日に用意しとけばいいのに。」
「うるさい」
などとしている間に鞄の準備を終えると蒼志はズボンに手をかけ、おもむろにそれを下に降ろした。
「ちょっ…お兄ちゃん!いきなり脱がないでよ!」
碧維が抗議の声を上げるがそれにすら構っている時間はない。
「もう!先に下に降りてるからね」
「はいはい」
それから素早く着替えると鞄を持って部屋を出ていく。
階段を降りるとそこには碧維が食パンと弁当を持って立っていた。
「はい、お弁当と朝ごはん。」
「せんきゅ!」
食パンを口にくわえ弁当を鞄に詰め込むと早足で玄関に向かう。
玄関で靴を履き、外に出て2~3歩進んだ所で振り返り感慨深く家を見上げる。
築50年はたっていそうな純和風なたたずまい、ここからでも2階にある蒼志の部屋を見る事ができた。
「お兄ちゃぁ~ん!ほんとに遅刻しちゃうよぉ~!」
10メートル程先で碧維が蒼志を急かす。
「わかってるよ!」
それに応えてからもう一度振り返り我が家を見上げる
「……………」
「お兄ちゃんてばぁ~っ!」
「………はぁ」
遠くから響く碧維の声で気持ちを急かされた蒼志は今日もまた始まった日常にうんざりしながらも顔を上げ
「行ってきます。」
確かにそう告げると遥か先を走る碧維を、そして学園を目指して走り出した。
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