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「誰かさんが名前も名乗らず出て行ったからな。説明するのに時間がかかったんだよ」
嘘ではない。
緋暮には人相だけでは伝わらず、時間がかかったのは事実だった。
ただ、「軽薄そうに笑う人」と言った瞬間に話は通じたが。
「あれ?僕名前言わなかったっけ?……まぁいいや。」
一切言ってねぇよ。
「まぁ二人とも中に入りなよ。」
逆らっても仕方ないので、ここは素直に従う。
一番近くに置いてある椅子に腰かける。
俺たちが座るのを見て、橘さんが口を開く。
「さて、それじゃぁさっそく本題に入ろうか」
橘さんはそう言ってまた軽薄な笑みを浮かべた。
「本題?」
俺の疑問の声に橘さんは待ってましたと言わんばかりの笑顔を向けてくる。
「そう。あの化け物についてだよ、高村君。知りたかったんだろ?」
いきなり核心を突くその言葉に思わず息を飲む。
あくまで聞くか聞かないかはキミの意志だ。みたいな言葉のくせに、その眼は俺を逃がさないと言うかの如くギラついている。
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