train

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 去年の今頃君が買ってくれたマフラーは、あの日と変わらずあたしを温めてくれる。  何色が似合うだとか、この模様がいいだとか。 「これ、似合う」  あたしはというと、君のめずらしく真剣な顔ばかり見ていたんだ。何件もはしごして、チェック柄の黄色いマフラーを選んだ君。あたしはアースカラーが大好きで。でもそんなことお構いナシに君は笑った。 「あたしに似合う、かなぁ」  普段は絶対身に着けないよな鮮やかな色合いが、あたしを少し、変えさせる。その変化がなんだか気恥ずかしいような……。君はというと、やけに満足げだったね。店を出てから、早速ぐるぐるのもこもこにされた時――あたしもにやけていたのは永久に秘密だけど。
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