17895人が本棚に入れています
本棚に追加
/320ページ
世の中色んな人がいるものだ。
こんな紳士的で、一回も染めていないような綺麗で艶やかな黒髪。
堂々と背筋を伸ばして、迷いのない目で真っ直ぐ前を見据える瞳。
彼はきっと『かっこいい』という言葉より『ハンサム』という言葉の方が似合う。
「千夏!遅い!」
私に気付いた美久が軽く怒りを表しながら走って来た。
「ごめんごめん。地図を忘れて……でも、電話したんだけどなぁ」
そう言うと美久はハッとしてポケットや鞄の中を「ない!」と繰り返し言いながらあさる。
「……携帯忘れた!取りに帰るから、あそこで待ってて」
美久が指差したのは駅のすぐ横にある小綺麗なファミレス。
「分かった」と言うと、美久は謝りながらファミレスの反対側に向かって歩き出した。
携帯電話なんて家に置いてきてしまったのなら、それでいいではないかと思うだろうが、現代人の中には携帯を触っていないと落ち着かない人がいる。
暇な時に携帯を開くのは無意識で、その動作ができないとなぜか物足りないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!