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「桜木!おはよー!」
不意に背後から聞き覚えのある声がした。
振り向くと俺の天敵――もとい学級委員長の女が俺の方へとかけてくる。
朝から元気な奴だ。
「おはよう……」
俺は気のない返事をして再び歩き出す。
「何よ、その返事!人が挨拶してやってんのに!」
「朝早くからうるせーよ……お前の声は頭に響く」
「あーまた昨日桜とやってたんでしょ?やらしー」
「朝からそう言う事を言う聖良(せら)の方がやらしいから!俺は先に行くぞ」
そして一目散に逃げ出した。
あんな奴に捕まってたら体力を消耗する一方で何の得もありゃしない。
聖良は陸上部期待のホープらしく、才色兼備であるため学校でも人気者だ。
それは小学校の頃から相変わらずで、俺もあいつの事が異性として好きだった時もある。
学校に到着し教室に向かう途中、再び背後で聞き覚えのある声がした。
ただ今度の声はさっきと違い、俺にとってかなり嬉しい声だ。
「おはよう、達也」
「おはよう。今日は帰って来るんだろ?」
「当たり前よ。だって達也の家は私の家でもあるんだから」
桜はそう言って優しく微笑んだ。
彼女は神谷桜。俺の彼女であり婚約者。現在俺と同棲中である。
16歳にして婚約。
なぜこんな事になっているのか。
それを踏まえてあの日から今日まで、まずは俺達の出逢いから話そうか。
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