出逢い

2/3
前へ
/119ページ
次へ
 7月7日。  俺はまだ重たい瞼を擦りながら自分の席に座っていた。  ……なんだか教室が騒がしい。  俺は窓際最後列の席から教室を見渡す。 「噂通りだといいなぁ」 「お前、運命の出逢いみたいなのを期待してるわけ?」 「ばっ、ちげぇよ!だけどマジで可愛いらしいぜ?」 「どうだか。この時期の転校生なんてさしずめ『いじめ』とか原因じゃね?」  数名の男子がそういった会話を交わしていた。注意して聞いてみると、あちこちで転校生の話が出ているのがわかる。  前の席の誠がくるっと向きを変えて俺に話しかけてきた。 「転校生だってよ!」 「らしいな」 「テンション低っ!転校生だよ、転校生!ワクワクしないの?」 「まぁするけど。でも今それどころじゃない。眠い……」  誠はニタッと不快な笑みを見せ、俺のあげたDVD見てたの?と、俺の耳元で囁いた。 「やめろ、気持ち悪い。つか見てねぇよ!しかもお前が勝手に俺の家に置いてったんだろ?見ねぇよ、あんなもの」 「酷っ!せっかく女体に見慣れて貰おうと置いていったのに!」 「女体とか言うな、気持ち悪いから!つか前向け、そろそろバァサン来るから」  俺がそう言い終わるや否や、『バァサン』こと3年2組の担任の鴻池が教室の扉を勢い良く開けた。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加