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席について!と学級委員の西園寺が皆に呼び掛ける。
皆、各々の席に戻っていく。
鴻池が教壇に立った。
「おはようございます!朝の様子からして知っている人もいると思いますが今日からこのクラスの生徒が一人増えます」
鴻池が入り口のところへ歩いていく。そして何かを誰かと話し始めた。
数秒後、鴻池が入り口から一歩下がり道を空けると、女の子が一人、恥ずかしそうに教室に入ってきた。
鴻池はその少女を教壇に立たせ、再度彼女に話しかける。
少女はほんのり頬を赤らめながら、さっと教室を見渡した。
「えっと…、初めまして。第二中学校から来ました、神谷桜です。桜って呼んでください」
神谷桜と名乗る少女は春風をまとったような優しい笑みをこぼした。
鴻池は神谷の肩をポンッと軽く叩き、俺の隣の空席を指さす。
「あなたの席はあそこ、達也という男の隣よ」
少女は鴻池に軽く会釈をして、俺の席の隣に座った。
「よろしくお願いします、達也さん」
少女は再び優しく微笑んだ。
俺はそんな彼女の笑顔を直視出来ず、さっと目をそらし、適当に相づちを打った。
織姫に会った気分だった、と言っても良いくらいの心境だった。
俺は生まれて初めて一目惚れをしたのだ。
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