第十九章 葛藤

2/4
前へ
/87ページ
次へ
『椿を殺したくない……でも私、消えたくないの……椿が好き……』 「ちあっ……落ち着い――」  俺が千秋に手を伸ばした瞬間―― 『触らないでッ!!!』  千秋は叫ぶ。 『見てよこの爪……こんなんじゃ私、椿に触れられない……椿を傷つけてしまうの』  千秋の辛そうな顔は、ふくらはぎの痛みとは比べ物にならない程に痛くて。  俺は、どうしようもなく無力で。  伸ばしかけた手を、静かに下ろした。 『もう嫌っ!! 何で……こうなっちゃったの? どうして?』  俺は 『どうすればいいの……このままじゃ私、きっと椿を殺してしまう……この爪で』  千秋が 『ごめんっ……椿……痛かったよね――』  好きだ 「千秋!!!」  長い爪?  そんなの関係ない。  鋭い爪が体に刺さろうとも、俺は千秋を抱き締める。 「痛いのは……千秋だろ? 千秋が一番痛がってる」  案の定、俺の肩に千秋の爪が刺さる。 『つば……肩がっ』  それでも俺は離さない。  
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1698人が本棚に入れています
本棚に追加