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日常茶飯事に自分のことを「可愛い」と言う直江に、高耶はまだ慣れない。日に何度も囁いては自分の反応を楽しんでいる直江にも、そして言われる度にドキッとする自分にも呆れながら、高耶は半ば八つ当たりのように残っているじゃがいもを指し示す。
「んなことはいいんだよッ!とにかくさっさとそれをむけ!メシ食えないだろ!」
「わかりましたよ…」
まだぶつぶつ言っている直江に、文句を言いたいのはこっちだと心の中で呟いて、高耶はゆで上がった素麺をザルにあげ、流水に当てて冷やし始める。それを横目で見ながらじゃがいもをむいていた直江の耳に、小さな呟きが聞こえた。
「おまえに…………んだよ」
「え?何ですか?」
水の音で本当に聞き取れなかった直江が聞き返すと、高耶がこっちを向いた。
「だからっ、おまえにまずい料理を食わしたくないって言ったんだよ!」
意味が掴めずに瞬きをした直江に、すっかり顔を赤らめた高耶が言う。
「手元が狂って調味料間違ったらどうすんだ、味付け失敗したら大変なんだからな!おまえには、ちゃんとしたうまい料理を食って欲しいんだよ、だから、メシ作ってる時には何もするなって言ってるんだ」
一気に言って高耶は乱れた息をついた。その殺し文句に、直江は驚いて目をみはっていたが、すぐににっこり笑った。心底嬉しそうな笑顔に高耶は脈拍が速くなる。慌てて目をそらし、素麺を水からあげてまた包丁を握る。まだ自分を見ている直江を睨んで、
「とにかくっ!うまいメシが食いたかったらおとなしくしてろっ!」
「わかりました、おとなしく我慢してますよ。だから」
言葉を切って、直江は高耶に身体を寄せた。
「あとで高耶さんも食べさせて下さいね」
「~~~ごちゃごちゃ言ってないでさっさとしろよ、もうっ!」
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