87人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ
後悔/星詠みの追憶
゙運命゙
…男は、その言葉が嫌いだった。
それは何よりも強い言葉。
わずかな抵抗さえ出来ない、あまりにも強大なチカラ。
圧倒的な重圧を以てすべてをねじ伏せ、何もかもを踏み躙るチカラ。
…男は、その言葉が嫌いだった
急速に、緩慢に。
熱を失って行く肉体。
己の中の決定的な゙何がが千切れ、終着へと加速して行く実感。
…だが
(……こんな…モノか…)
…自らの終着が来る、
その瞬間さえ、男には退屈でしかなかった。
<運命>
男には、"それ゙を見るチカラがあった。
だから、男はあらゆる事を知っていた。
何時、何処で
何が起きるのか
…何時、何処で
自分が死ぬのか
その瞬間の事さえ、男はは知っていた。
…退屈、だった。
あまりに退屈だった。
何があるのか、
何が起きるのか
…それをすべて知っている人生は、あまりにも退屈でしかなかった。
まるで、何度も見た映画を繰り返し眺めるように
…彼の人生は、充実しているように見えて。
彼自身には、耐えがたい退屈に苛まれる日々の繰り返しだった。
最初のコメントを投稿しよう!