序章‐中学時代‐

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天は二物を与えずとはいうが、一物さえも与えられていない人はいくらでもいることだろう。 その一人が、俺、渋川義堅だ。   俺は顔に関して外見的要素で恵まれているものは何も無い。 ブサイクの見本だと今でも思ってる。 また、俺は身長が低い。 最近の男は身長が170㎝くらいあるのが当たり前らしいけど、俺は166㎝しかない。   さらに、運動神経ゼロで音痴、近視であるばかりでなく不器用で力が弱くて体力が無い。 つまり、身体的にも恵まれていない。 俺‐渋川義堅という男は本来、他人が背負うべき欠点を背負わされて生まれてきたとしか思えない。 それくらい、自分が嫌いだった。 自分に自信が持てず、次第に扱いにくいひねくれ者となった俺が級友から受け入れられるわけがなく、常に浮いた存在だった。   でも、中学時代は成績が良い方だったから、それでなんとかみんなを見返していた。 入学してから中1の二学期まで少しいじめられていたけど、俺が成績が良いことがわかるといじめはなくなった。 いじめられなくなってうれしかったが、何か嫌だった。   『成績だけが俺の価値であり俺の個性だ』 あのとき、そう思えた。
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