【ターニングポイント】

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俺は親父にも同じ事を聞かれていたが、俺は…親父の前でもその質問には答えなかった。 そして…何も答えようとしない俺に親父は、もし俺が母親と出ていくなら、親父とはもう他人だと思えと言た。 俺や母親とは二度と会わないと…。 その言葉は、当時の俺には非常に重い言葉だった。 母親と出ていけば…父親とは他人になってしまう。 親父と家に残れば…母親は俺の母親でいてくれる。 二人の言葉を、こんな風に解釈した俺は…俺の想いに近い状況を子供なりに選んだ。 付け加えれば…学校が変わるのも、友達と離れるのも嫌だった。 母親は離婚話になる前から俺に、こんな質問をする事があった。 (母親が好きか?) (父親が好きか?) 俺は母親に 「どっちも好き」 だと答えたが、両親が離婚した場合…そのどちらにつくのかを決める理由の中に、俺はそんな事を入れてなかった。 俺が恋人と別れる時…別れ話しを切り出すと (私の事…もう、好きじゃなくなったんだ?) とか、もしくは (私の事…もう、嫌いになった?) と聞かれる事があるが、好き嫌いだけで一緒に居られる訳ではない。 【好き】でも別れを切り出す時もあれば… 【嫌い】になっても一緒にいる時もある。 俺は母親にそんな理由で答えを出した訳ではない事を、解って欲しかった。 この時のこの選択が、俺の人生で始めて迎えた人生を大きく左右する分岐点になった…。 自分で選んだ道がさっそく親父と死ぬハメになるなんて…この時の俺には思いもよらなかった。 【昭和】から【平成】に変わった年…。 【平成】という年号に込められた願いとは裏腹に俺の人生は、この年を境にして大きく変わっていった。
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