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サトミは、俺が言った
「まだ、好きだから…」
という嘘を真に受け俺の涙の訳を取り違えていた。
俺がどんな想いで頭を下げ子供を渡そうとしたかなどは知らないだろう。
でも、サトミにどう思われようが今回俺はやれるだけの事はやった。
所長にもハッキリと
「サトミは戻る気がないようですし、子供も引き取る気は無いようなので子供は俺が引き取ります。」
と言えた。
所長から
「ちゃんと謝ったのか?」
と言われたが俺は
「あれ以上に謝る事は出来ませんよ。」
と答えた。
所長は
「そうか…なら仕方ないな。」
「しばらくは仕事なんか頑張らなくていいから、出店場所で女でも見つけろ」
と明るく答えた。
「そうですね。」
と答えた俺も久しぶりに表情が緩んだ。
その言葉は、あれだけ現実的な厳しい言葉を放った所長の言葉とは思えなかった。
しかし、現実的であるからこそ状況が変わらないなら頑張れとは言わないのだろう。
俺も友達くらいしか俺を認めてくれないなら、その現実を有りのまま受け入れる事にした。
解ってくれる奴だけ解ってくれればいい。
そう思った。
ただ、俺の子供には俺の気持ちを解って欲しいと思った。
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