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俺は、おもわず親父に
「コレどうしたの?」
と聞いた。
普通…親に30円くらいの飴玉をもらって、そんな事を聞き返す子供もいないだろう。
俺はその夜、ご飯も食べさせてもらえなかった。
それなのに【飴】なんてもらっていいものかと思ったのだろう。
当時の俺には、当たり前に出るご飯よりも【飴】は
(贅沢なもの)
という意識があった。
(当たり前に出るご飯)
それが当たり前に出なくなったって事は、そんな金も俺の親父にはもう残っていないのだろう。
今までならば飴や、お菓子といった生きていくうえで不可欠じゃない物は与えてくれなくても、三度の飯を欠く事はなかった。
そんな状況を察して、俺はその飴を買う金はどうしたのか親父に聞いたのだろう。
親父は少し笑って
「盗んで来た」
と答えた。
一瞬驚いたが親父がくだらない冗談を言う時は、いつもこんな顔をしていた。
当時、俺は9才だった。
子供の俺からしてみても、自分達がそこまで追い詰められているのは感じとれていた。
親父の笑顔はすぐに複雑な表情に変わった。
子供なりに俺は
(もう、おわりなんだ)
と思った。
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