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「おまえ、目が真っ赤で、そのうさぎそっくりだな」 男のコは私を見て笑っていた 「あんまり泣いてるとな、耳が生えてヒゲが生えて、本当にうさぎになっちゃうんだぞ。だからもう泣くな。泣き虫」 泣き虫……? 男のコはそう言うと、ランドセルを拾ってビチャっビチャっと音をたてながら去っていった もうそこまで夏が来ているような、日差しの暑い日だった でも時折吹く風は肌寒く、遠くのほうで男のコがくしゃみをしたように見えた 泣き虫 泣き虫 うさぎになる 私はその場に座ったまま、うさぎを抱きしめ、男のコに言われた言葉を繰り返し呟いていた
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