~既成年~

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~既成年~ 小さい頃の僕は、二十歳を迎えた人は、皆、大人になれる そんな風に青い考えを疑いもせず、歳を重ねていった 気が付くと、僕は“成人”を配られていた 僕は、本当に大人になったのか? 一年前と何か変わったのか? 着慣れない背広姿 「只の衣装のようだ」と鏡に皮肉を吐く コレが大人? こんなものが? 僕は古い青い考えを疑いだす 僕の持つ音は 未だ青臭いまま、大人を真似ているだけ 頼りなく、新品の背広で大人を奏でる 僕の描いた大人は、 年を取っただけの子供だった 精一杯の背伸びを見せる、鏡の中のマヌケたガキ これが、成人の肩書きをぶら下げた僕だ きっとアンタ達は鼻で笑って見てるんだろ? しっくりと馴染んだ背広の群れに 皆、同じに見えると無言で皮肉る コレが大人? 気味悪い程に並べられた無表情の団体 彼等の音は、違いを見つけるのが困難な程に整っている 衣装姿の僕には、理解出来ないだけなのか? 目の前にいる大人は なんだか霞んでみえる人達だ 疲れた顔で、電車を乗り降りする背広の集団 それが、僕に見える“大人”の姿だ きっと僕には未だ解らないだけだ そう言い聞かせて目を瞑る 大人ってどんな人なんですか? 大人って誰の事を言うのか? この人達がそうなのか? 僕はその答えすら持たないまま 今日も、電車に乗り込み目を瞑る
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