第一章 ベクルックス・ルウからの手紙

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     初花月上旬、まだ冬の気配が色濃く残る初春。  春学期が始まってから1番最初の、パートナー幻獣と一緒に行う実技の授業が終わった後の昼休み。当初の約束どおり、アイオライトを飼育塔へ戻さず、手綱も鞍も外して自由にしてやってから、昼食を摂りに食堂へやってきた。  食堂はいつもと同じように学生で混み合っていて、1人分の席を取ることにも苦労する。  ようやく座れる席を見付けて腰を掛ければ、待っていましたと言わんばかりにぽんっと背後から背中を叩かれ、昼食のチキンカツサンドの乗ったトレイの上のコップを倒しそうになった。   「お疲れ~。授業見てたけど、相変わらず凄いよな」    明るい笑顔と声が、振り返ると同時に向けられる。    
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