ジオラマ町奇譚

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部屋に地図を拡げる。 この町の詳細地図だ。 郊外の新興住宅地であるこの町は開発途中と云う事もあり、多すぎず、少なすぎずと云った住宅地。 周囲を山に囲われ町にも流れる川。自然と人工物が程好く調和がとれている。 ジオラマにするには理想的なモデルだ。 その日は地図を眺めながらいずれ完成するであろうこの町のジオラマに想いを寄せ、これからの作業のプランを練った。 次の日から行動に移った。 町には模型屋が無いので会社から帰る途中に途中下車をして大きな模型屋で必要な工具と材料を買う。 家に帰ると家族との会話もそこそこにジオラマ造りに取りかかる。 大まかな作業は詳細地図で事足りるのだが、私はより完璧を求める為にカメラを買い、町中の建物を写し始めた。 ある時は怪しまれながらも幾ばくかの日数を費やし町中の建物をフィルムに収め、念願のジオラマによる、この町の再現を始めた。 自然の造形から始まり町中の道路や鉄道や流れる川。 そして、これが一番根気のいる作業、建物の造形、再現を根気よく丁寧に続けていった。 退屈だった毎日に変化をジオラマはもたらした。 いつしか私は家庭を省みる事無くジオラマ造りに没頭していた。 やがて…完成する時が来た。
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