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――そんなわけで。
海斗が家の扉を開けると、
「不束者ですが、どうぞ宜しくお願いいたします」
三つ指付いて微妙に間違ったことを言っている美少女(犬耳犬尻尾付き)と遭遇したのだった。
頭の中がフライドチキンで一杯だった海斗は、その現実に唖然とし、つい反射的に、
「お断わりです帰ってくださいこん畜生!」
と叫び、叫ばれた今宵は、
「あぅ~!そんなこと言わずにお願いします~!」
と、涙目で泣き付いたわけだ。
それは今宵からしてみれば、『ここを追い出されたら行くあてがない』という恐怖から来る反射的行動だったが、抱きつかれた海斗としてはたまったものではない。
何しろ、人間化した今宵はかなりの美少女なのだ。
140センチ位の小さな背丈に、薄い栗色のふわふわな髪の毛とくりくりした瞳。
本人的にはコンプレックスなふさふさの犬耳犬尻尾も、アクセサリ的にはとても可愛らしい。
で、そんな子に抱きつかれると、男としては色々困るわけで。
「っ、えぇい、ひっつくな!」
ぐいっ、と今宵の肩を掴んで、自分から引き剥がす海斗。
「あうぅ、ごご、ごめんなさいっ」
ようやく自分が抱きついていたことに気付いたのか、赤くなりながらも小さくなる今宵。
「…………」
「…………」
微妙な沈黙。
突然の展開に戸惑う海斗と、顔を赤らめて狼狽する今宵。
その均衡を先に破ったのは、海斗だった。
「え、えぇと……キミは、何?」
言外に、『お前人間?』と聞く海斗。
だがそれも当然で、だってあの耳と尻尾はどう見たって本物で、その証拠にピコピコ動いてるし、あったかそうだしふかふかだし、ああもう、触りたい!
そんな思いを胸の奥底に沈めつつ、今宵の答えを待つ海斗。
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