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――果たして、どんな返答が来るのか。
猫又ならぬ犬又?
それとも、耳と尻尾はアクセサリだと主張する?
あるいは、宇宙人とか突拍子もない話になるのか?
どんな返答がきても良いように、覚悟を決める海斗。
緊張で、ゴクリと喉が鳴る。
果たして、緊張する海斗を前に今宵は、
「えっと、私は……逆月今宵、です」
……とりあえず、自己紹介から入ってみた。
ズルッ、と漫画顔負けの転びっぷりを見せる海斗。
だが、すぐに気を取り直して叫んだ。
「――誰も名前なんて聞いてねぇよ!お前は、人間なのかあるいはその他に類する生物なのかって聞いてんだ!」
なんかもう色々とめんどくさくなって、地の口調で話す海斗。
対して、怒鳴られてしまった今宵はと言えば、
「あうぅ……ごめんなさいです……」
涙うるうるで、毛並みの良い耳と尻尾もションボリと垂れ下がってしまった。
「う……」
その光景に、罪悪感を覚える海斗。
彼は基本的に、動物と子供は好きなのだ。
で、そんなわけだから、よくわからないけど動物で子供な今宵を泣かせてしまうのは、こう、海斗的にはよろしくない。
「えっと、だな……今宵、だっけ?」
そんなわけで、フォローすべく気持ちを落ち着かせながら話し掛ける海斗。
「……う?」
ちょっと優しくなった声に、恐る恐る上目遣いな今宵。
……何というか、その。
(――ヤバい、可愛い)
こう、今すぐ頭を撫でたりとか抱き締めたりとかしたくなるような、小動物チックな可愛らしさに愕然とする海斗。
だがしかし、その欲望のままに行動すると一歩間違えば犯罪者なので、理性を総動員しながら会話を続ける。
「その……今宵って、人間なのか?」
問い掛け自体は、さっきと同じに。
けれど今度は、極力優しく。
そんな思いが伝わったのか、オドオドしながらも今宵は事情を説明し始めたのだった……
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