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天然親子
――今宵は、ちょっとだけ安心していた。
人間の家に住むなんて無理だと最初は思っていたけど、過程はどうあれ一緒に住ませてくれることになったし、海斗さんも根本的には優しい人みたいだし……
そんな思考を巡らせながら、リビングのソファーに座ってまったりする今宵。
警戒心0で、和みまくっている。
で、そんな今宵を見て和みつつも、若干呆れ気味な海斗。
その、ただでさえ他人の家なんだし、増して仮にも俺は男なわけで、もう少し警戒してほしいのだが。
とはいえ、そんなこと本人に言えるはずもなく。
「今宵、今から晩ご飯作るけど、犬って食べれないものとかあるのか?」
結果として、実務的なことを言うはめになってしまう。
対して、自分が気遣ってもらえるのが嬉しいのか嬉々として答える今宵。
『やっぱり海斗さんは優しい人なんですね~』的なことを考えながら、尻尾をふりふり。
「えとですね……玉葱が、ダメです」
そう言うと、不思議そうな顔をする海斗。
「普通の犬ならダメだろうけど……今宵も、食べれないのか?」
海斗自身、犬に玉葱を食べさせると死ぬというのは聞いたことがあるが、人間に変化すらできる今宵でも食べられないのだろうか?
そんな学術的疑問に対して、今宵の答えは実に明確だった。
「食べれません。嫌いですから」
「…………」
いやその、今宵にしては珍しいきっぱりとした断言だったが、その内容があんまりだったような……?
「えと……嫌いなの?玉葱」
「嫌いです、玉葱」
「でも、食べれないってわけじゃ、ないんだろ?」
「食べれません。嫌いですから」
「……でも、生物学的には食べれる、と」
「あぅ……その、一応は」
そう答えながらも、早くも泣きそうになっている今宵。
『でもでも、食べたくないんです!』、と全身を使ってアピールしている。
海斗は、それを正確に汲み取って。
「わかった、安心しろ」
そう、力強く断言した。
「わぁ……」
やっぱり海斗さん優しいです――
「お前の皿には、玉葱の炒め物を山盛りにしてやるから」
「ふえぇぇ!?」
――やっぱり、優しくないです……
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