第1章:優しさの先にあるモノ

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「軍属・・・つまりは、将校から見習い、厩番まで、全ての人事決定権は軍の統率者、私にある。 先代とブレイロア卿に免じて見逃していたが・・・。 もう無理だ。 お前はこの場で解任する。 将軍職より速やかに退き、領地にて蟄居を命じる」 あっさりと言い放ちながら、その内容は厳しい。 ユリアにしてみればまだ甘い罰なのだが、これ以上は罪状を考慮しても罰を科すことが出来ない。 突然の断罪に、男爵は愕然として固まっている。 「・・・だが、現状でそれは不可能だろう。 しばらくは地下牢にでも入って頭を冷やしていろ」 「なっ、ふざけるなよ! 小娘がッ! 好き勝手言いおって!!」 相手が大公爵であることを忘れ、素で吐き捨てた男爵に、ユリアは殺意さえ感じそうな冷徹な笑みを浮かべた。 「今日の罪状は忘れてやるつもりでいたんだがな・・・」 「・・・侮辱罪、上官抗命罪、名誉毀損罪。 主な罪状はこの3つです」 沈んだ声音で、学院長が告げる。 それを受けて、ユリアは男爵を侮蔑の瞳で見上げる。 「先達には敬意を・・・と学んで来たが。 お前には必要ないようだ。 ポール」 「はい」 「特務科から人員を選抜。 コレを拘束して見張らせておけ。 私の名を出しても構わん」 「承りまして・・・」 命じると、凍り付いている男爵をそのままに身を翻す。 .
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