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この堅物をどう口説こうか・・・。
ユリアは真剣に考えながら、瞳を細めた。
「・・・令嬢が、心配か?」
問いに、エオルの肩がビクリと震える。
「貴族の子弟には愚か者も多い。
留守がちになることで、どこぞの馬の骨に汚されるのを恐れているのか?」
図星だったのか、エオルは拳を一層強く握り締めた。
もしかしたら、以前にあったのかもしれない。
親としては、当然の心配だろう。
「高位の貴族が相手になれば、令嬢はお前の立場を慮って何も出来ないかもしれない。
そう考えたのか」
沈黙。
それは肯定を示していた。
「・・・私は、そんなに頼りないか」
低い、寂しそうな声に、エオルはハッとして顔を上げる。
「言ってくれれば、いくらでも手を貸すぞ。
令嬢や夫人が心配なら、ここに呼べば良い。
医療係りはいくらいても足りないだろうから助かる。
それに、ここなら私以上に地位の高い者はいない。
私が後見になれば誰も手が出せない。
・・・そうは考えなかったのか?」
寂しげな声に、エオルは慌てて首を振った。
「そうではありませんっ!
恐れ多いことながら、貴方にすがることも考えたのです。
ですが、そうなると貴方に迷惑が・・・」
「本人が構わないと言っている」
あっさりとしたユリアに、エオルは何だかバカバカしくなってきた。
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