第1章:優しさの先にあるモノ

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「・・・貴方には、敵いませんな」 「どう言う意味か分からんが・・・褒め言葉として受け取っておこう。 で、返答やいかに?」 笑いを堪えるようなエオルに、ユリアは片眉をつり上げて複雑な表情をする。 「約束して下さいますか。 娘を、守って下さると・・・」 「無論。 自分から言い出したのだから当然だ」 キッパリと言い切ったユリアに、エオルは深々と頭を下げた。 それは2つの意味を持っていた。 娘を守って欲しいと言う願い。 辞令を受けると言う承諾。 それを理解して、ユリアは柔らかくかすかに微笑んだ。 その手元がサラサラと動き、書類に流麗な文字を記していく。 最初にエオルの名を、最後末尾に自分の署名と印を押す。 「・・・国境常駐警備軍副将軍ブレイロア卿エオル・シュルト。 汝を国境常駐警備軍将軍に任じる。 エリクトワール大公爵ユリア・リーロア・オルガニスタ・ハルシフォン・フェナル。 武運を」 「御意」 厳かに読み上げながら立ち上がるユリアに続いて、エオルも立ち上がり、任命書を恭しく受け取った。 次いで、将軍位を示す腕章とマントを渡す。 質素ではあったが、国家にとっては重要な任命式が今行われた。 .
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