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「・・・貴方には、敵いませんな」
「どう言う意味か分からんが・・・褒め言葉として受け取っておこう。
で、返答やいかに?」
笑いを堪えるようなエオルに、ユリアは片眉をつり上げて複雑な表情をする。
「約束して下さいますか。
娘を、守って下さると・・・」
「無論。
自分から言い出したのだから当然だ」
キッパリと言い切ったユリアに、エオルは深々と頭を下げた。
それは2つの意味を持っていた。
娘を守って欲しいと言う願い。
辞令を受けると言う承諾。
それを理解して、ユリアは柔らかくかすかに微笑んだ。
その手元がサラサラと動き、書類に流麗な文字を記していく。
最初にエオルの名を、最後末尾に自分の署名と印を押す。
「・・・国境常駐警備軍副将軍ブレイロア卿エオル・シュルト。
汝を国境常駐警備軍将軍に任じる。
エリクトワール大公爵ユリア・リーロア・オルガニスタ・ハルシフォン・フェナル。
武運を」
「御意」
厳かに読み上げながら立ち上がるユリアに続いて、エオルも立ち上がり、任命書を恭しく受け取った。
次いで、将軍位を示す腕章とマントを渡す。
質素ではあったが、国家にとっては重要な任命式が今行われた。
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