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「俺の父は宮廷で司法大臣をしてる。
こいつの父上は宰相だぜ?
お前みたいな小娘の言葉なんざ聞くかよ」
鼻で笑う少年に、セレスは怒りの余り目まいで倒れるかと思った。
国政に携わる、しかも、官吏の頂点にある大臣が息子の言葉一つで法をねじ曲げるのか。
その事実に、吐き気が込み上げる。
影で聞いていたユリアは忌々しげに舌打ちをし、「やはりさっさと葬っておくべきだった」と物騒に呟く。
それに青ざめながらも、カイン達は少年の言葉には怒りを覚えた。
まるで、自分は国の在り方を変えられる存在だと言うかのような態度に、言い様のない嫌悪感が沸き上がる。
「・・・大臣は、国政にあって民を導き、王を補佐するのが役目のはず・・・。
ただの子供の我が儘で、法を曲げるなんて・・・ッ。
1大臣のみならず宰相までッ。
そんなの、官吏として・・・いいえ、人として間違っているわ!!」
悲痛さを込めた叫びに、ユリア達は内心で頷く。
だが、少年達はバカにしたように笑う。
「んなの、ただの理想じゃねえか。
今時そんな夢持ってたらやってけないぜ?
貴族ってのはお前が思ってるほどきれいじゃねえんだよ」
少年の言葉にも一理ある。
しかし、ユリアはそれを肯定しようとは思わない。
今、現時点で言えば、間違っているのは少年達だ。
黙り込むセレスに、ユリアが出て行こうとした時、低い呟きが耳に滑り込んで来た。
「・・・・・・悪いの?」
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