第1章:優しさの先にあるモノ

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エルカイン王立学院は、騒然としていた。 いきなり戦争の最前線となり、1000人に及ぶ常駐警備軍の兵士を学院に迎え入れるのだ。 戦争経験のない生徒達にしてみれば、恐怖をかきたてるのには充分だった。 その中で、今1番大変なのは、ポールであった。 突然、最近まで同じ学び舎で生活していた(嘲笑っていた)生徒が、国内のNo.2だと言われれば、混乱もするだろう。 それを相手にしているのだから、精神的疲労の方が深刻である。 それを命じた当のユリアは、我関せず、と言う態度を貫いているが。 「・・・ユリア。 聞いてもいいかしら」 「なんだ」 「さっきから、何をしているの?」 「見て分からないか」 「分からないから聞いてるんだけど・・・」 スーシェリアの言葉に、ユリアは納得した。 そして、作業の手を止めると、作っていたものを見えるように持ち上げる。 「何に見える」 「・・・紙を折って作った蝶」 「そうだ。 分かってるじゃないか」 「何の形かなんて聞いてないっ。 何でそれを作ってるのかを聞いてるの」 怒り、叫んだスーシェリアに、ユリアはなるほどと頷いた。 この時点で、2人以外の4人は2人について薄々気付いていた事を再確認した。 曰く、 ユリアは天然 スーシェリアは短気 という事だ。
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