第1章:優しさの先にあるモノ

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玄関前の広場に、微妙に隊列を乱して並んでいる兵達と、将軍と副将軍がいた。 それらの前に悠然と歩み寄る。 カイン達は人垣の前で、それを押さえるように立つ。 生徒達から疑念の視線を、将軍エルブロワ男爵から侮りの視線を向けられる。 が、そんなことは一切気にせず、ユリアは男爵の5歩ほと前で立ち止まる。 「早急な行動に感服する。 漏れる者がないのを嬉しく思う」 厳かな、感情を宿さない口上に、ポールはわずかに青ざめる。 表には出さないが、半端なく怒っている。 「いえいえ、それは王国の将として当然のことです。 閣下はお変わりなく?」 「・・・変わりないように見えるなら医者に行け」 冷ややかに紡がれる声に気付かないのか、男爵はわざとらしく目を見張る。 「おお! なんと言うことか! 大公爵にして総帥ともあろう方が、そんな手傷を負うとはッ。 大丈夫なのですか?!」 どこまでもわざとらしい言葉に、声だけでなく表情と瞳が凍り付く。 が、やはり男爵は気付かない。 ここで、空気がかすかに寒々しいことにカイン達が気付いて強張る。 .
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