第1章:優しさの先にあるモノ

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「ああ、不覚にも手傷をおわされたが問題は・・・」 「やはり、幼い貴方には大任なのでしょう」 無い。 と続けようとしていたユリアを遮り、男爵は慈悲深い紳士を装って嘆いている。 この時、男爵の後ろに控えている初老の男性が表情を固くして青ざめ、さりげなくユリアから視線を逸らす。 男性しか聞き取る、と言うより読み取ることの出来なかったユリアの唇は、冷ややかに吐き捨てていた。 下衆が と短く。 が、言われた男爵は全く気付かず、なおも言い募る。 「まだお若く美しい貴方には高位貴族に嫁ぐことも出来ましょう。 早く引退なさり、お子を育てられるのが女の幸せではありませんか? あぁ、そうだ、私の息子がちょうど良い年頃でして・・・」 「黙れブタ」 切り付けるような言葉に、その場の空間が凍り付いた。 男爵は怒りを瞳に宿らせてユリアを見下ろすが、息を呑んで硬直し、一気に青ざめた。 視線が、ユリアの真紅の凶眼とぶつかったのだ。 「愚劣が賢し面して何を言っている。 確かにこの怪我は私の責任。 だからと言って、それと引退がどう関係しているんだ。 ふざけるのも大概にしろ。 ここを守るのがお前の仕事だ。 だがな、お前の領地ではないんだよ。 好きにして良い権利など有りはしない」 前半自分だが、後半は男爵の素行に関連しているらしい。 .
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