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「ああ、不覚にも手傷をおわされたが問題は・・・」
「やはり、幼い貴方には大任なのでしょう」
無い。
と続けようとしていたユリアを遮り、男爵は慈悲深い紳士を装って嘆いている。
この時、男爵の後ろに控えている初老の男性が表情を固くして青ざめ、さりげなくユリアから視線を逸らす。
男性しか聞き取る、と言うより読み取ることの出来なかったユリアの唇は、冷ややかに吐き捨てていた。
下衆が
と短く。
が、言われた男爵は全く気付かず、なおも言い募る。
「まだお若く美しい貴方には高位貴族に嫁ぐことも出来ましょう。
早く引退なさり、お子を育てられるのが女の幸せではありませんか?
あぁ、そうだ、私の息子がちょうど良い年頃でして・・・」
「黙れブタ」
切り付けるような言葉に、その場の空間が凍り付いた。
男爵は怒りを瞳に宿らせてユリアを見下ろすが、息を呑んで硬直し、一気に青ざめた。
視線が、ユリアの真紅の凶眼とぶつかったのだ。
「愚劣が賢し面して何を言っている。
確かにこの怪我は私の責任。
だからと言って、それと引退がどう関係しているんだ。
ふざけるのも大概にしろ。
ここを守るのがお前の仕事だ。
だがな、お前の領地ではないんだよ。
好きにして良い権利など有りはしない」
前半自分だが、後半は男爵の素行に関連しているらしい。
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