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人間関係は、何故こうもややこしいのだろう。私が会社をクビになったのも、つまりは、その人間関係の輪から弾き飛ばされたのだ。別に仕事の能力が劣っていた訳ではない。
ああ……よそう。
六年間の会社勤めが何だったのか、そんな事を考えても仕方のないことだ。
私は人間が嫌いだ。それが全ての原因だ。
ところで、まさか母の話をする気になろうとは思わなかったが、母は短歌の世界では有名だ。『私は作家です』と公言してもいいだけの実績を持っている。しかし、母にそんな気持ちは無い。
全国で一位になった論文のサブタイトルは、『私は生涯一農婦』というものだった。
こんな事を書くと、いかにも無欲で、高潔な思想の持ち主かと思うだろうが、母ほどドロドロとした情念の持ち主はいない。息子である私の目にはそう映っている。
「こんなもの書いても、誰も読まんわ」
自嘲するようにそう言うのが口癖だった。
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