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第二刻 居場所
気が付くとカーテンから日の光が差し込んでいた、いつもなら熟睡感があるのだが、今日は眠くてたまらなかった、昨夜あのような事があっては当然である。
時刻は9時を回っていた、共働きの両親はとっくにいなくなっていた。
昨夜の電話では時間までは決めていなかったが、この二人はいつも時間は10時と決まっていた。
服装を私服に着替え洗面台目指し階段を降りていく、歯ブラシを済ませ、髪型をなおしブラシでとかす為に鏡を見た時であった。
自分の後ろに全身ずぶ濡れね女が立っていた、一瞬ドキっとして後ろを振り返るとその女はいなくなっていて、変わりに立っていた場所が水浸しになっていた。
巫琴は声も出ずその場に座り込んでしまった、少しして冷静になり先程の事を思い出す、白いワンピースで髪型はポニーテールのような感じであった…
『もしかして、今の静枝…』
半を示す時計の合図が響く。
『早く支度しなきゃ。』
急いで身支度を整え玄関に向かう、時計を見ると10時に近い時間になっていた。
『やっぱ間に合わないか…美鈴ちゃんに電話しなきゃ。』
携帯に連絡を入れながら靴を履く、玄関のを開けた時、電話は繋がった…
『もしもし、巫琴ちゃん。』
しかし返事はない、次の瞬間であった…
ガッタっと携帯が落ちる音が巫琴の携帯を通して聞こえた…
『もしもし、巫琴ちゃん?もしもし?どうしたの?』
巫琴が携帯を落とした原因は玄関の外にあった、今から出掛けようとドアを開けた直後、その前にやはり全身ずぶ濡れの一人の女性が立っていたのだ。
セミロングの黒髪、背格好からして間違いなく後輩の瑠美であった。
全身びしょ濡れでだったが、髪で隠れた顔を見ると微かに口が動いていた。しかし、巫琴にはその言葉が何と言っているかまでは聞こえなかった。
『瑠美!』
足元から消えて行く、その姿に語りかけた巫琴であったが、その声は届かずその影は完全に目の前から消えていった。
落ちた携帯を拾うとまだ美鈴には繋がっている状態だった。
『巫琴ちゃん!巫琴ちゃん!』
『美鈴ちゃん。』
『良かった、平気なの?いきなり携帯が落ちる音して、巫琴ちゃんの声が大分聞こえなくなったから…』
『あ、うん、ごめん、ちょっとね…』
『何かあったの?』
『うん…、そっち行ってから話すよ。』
『うん、解った。』
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