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私は知っていた
どんなに好きでも
どんなに涙を流しても
引き留められない恋があるということを
あなたは知らなかった
みっともなくても
涙を流してでも
引き留めたくなる恋があるという事を
そして私はこう聞いた
もし自分があなたから離れてしまっても
引き留めてはくれないのかと
相手が決めたことならば男として
引き留めることはできない
あなたはそういっていたよね
あれから何年
一緒に過ごしてきたかな
あなたと行くアウトドアは
なによりも刺激的で楽しかった
あなたの運転は少し乱暴だけど
エアコン嫌いな私の為に窓を開け
外の風を私にくれるあなたが大好きだった
あなたは優しい人だった
――私を中心に
あなたの生活は変わり始めた
そんなあなたを
私は今日 突き放した……
あなたは言葉通り
私を引き留めはしなかった
しなかったのに……
どうしてこんな夜中に
私に会いにきたの?
ドアを叩いて
チャイムを何度も響かせて
どうして私の目の前で泣いているの?
泣かないって決めてたのに
もう
あなたには触れちゃいけないって
そう思ってたのに
抱きしめたくなってくる
あんなに一緒にいたのに
私はまだまだあなたの事を
知らなかったみたいね?
思わずその揺れる肩を抱きしめて
包み込み……
涙で濡れたその唇からは
たくさんの想いが伝わってきて
走馬灯のように頭を支配する想い出達が
私の涙腺を破壊して
呼吸を乱し
止まらなくさせる
あなたへの想いを
好きでも離れなければならない時がある
あなたと自分に言い聞かせ
私たちは最後のキスをした
忘れられない
最後のキスを……
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