近くて遠い○○

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「待てッ!待って!待って下さいッ!?」 うなだれていた山ちゃんが顔を起こしながら叫んだ 「き、今日はたまたまあんなんだけどさ、いつもはちゃんと写真も撮ってんだぜッ!」 「…………………」 弁解する山ちゃんを余所に、香奈は海を見つめていた 「明日!明日俺の作品を見せてやるッ!」 「……………………」 山ちゃんの言葉に全く反応を示さない香奈は海の方を眺めたまま黙っていた 「どうだッ!驚いて声も出せないだろぅ!明日だッ!明日もここに来るんだぞ!」 山ちゃんは香奈に向かって叫ぶと、クルリと体の向きを返ると一目散に走り去っていった 走り去る間に、山ちゃんの目からキラキラと光る滴が横に流れていた事を、香奈は気付かなかった 「…………………」 山ちゃんがの姿が見えなくなると、香奈は芝生の上に転がったスケッチブックに手を伸ばし、またいつものように絵を描き始めた 「………………騒がしい人だなぁ…」 スケッチブックに視線を移した香奈が小さく呟く声はセミの鳴き声がかき消した
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