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風が一気に山ちゃんをすり抜けていく
「……………クッ…」
山ちゃんは風を腕で凌ぎながら下を向いた
風は綺麗に生え揃う芝を撫でながら、丘の上の木の葉をカサカサと鳴らすと、空高くへと舞い上がっていった
「……ん?」
下をうつむく山ちゃんの視界にある物が写った
幅2メートル程の、木の根の陰から白い布ような物が見えていたのだ
その、白い布は時折吹く風に、緑葉と一緒になってパタパタと芝生の上を踊っていた
山ちゃんはゆっくりとした歩幅で木の反対側へと回ってみた
反対側に回ると一人の少女が木の幹に背を預け、小さな寝息をたてていた
「…なんだ…居るんじゃん…」
山ちゃんは少し安堵の表情を浮かべると、香奈に聞こえないように一人小さく呟いた
海辺から吹く優しい風が、香奈の白いワンピースと少し短い髪を撫でるように揺らした
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