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法事が終わって僕は親父の車に乗ってみた。
49日ぶりにエンジンを入れてやる。
ゴウカイな音。
親父と良く似ている。
サイドボードから昔の写真を見つける。
子供の僕と親父の笑顔。
優しい写真が涙を誘う。
領収証
タバコの銘柄
洋楽のCD
変な置物
RALPHの香水
僕が壊したカップホルダー
日帰り温泉雑誌
すべてのモノが
思い出につながる。
色々といじりながら、ふと手が止まる。
「カーナビの登録地」ピッ
「s」
…s?
sってなんだ?
「詳細」
ピッ
「花盛町1丁目15番×」
…?
どこだろう?
行った事がない。
親戚もいない。
ナビの登録はこれだけだ。
考えていると携帯が鳴った。
彼女からだ。
そうだ、明日会うんだ。
彼女の声。
大好きな彼女の声。
僕が親父の車にいる事を伝えると声は一層やわらかくなる。
こういう所が好きだと思う。
「明日、ドライブしよう。
花盛町に行ってみたいんだ。」
見てやろう。
親父の「花盛町」を。
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