1

3/14
113人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
法事が終わって僕は親父の車に乗ってみた。 49日ぶりにエンジンを入れてやる。 ゴウカイな音。 親父と良く似ている。 サイドボードから昔の写真を見つける。 子供の僕と親父の笑顔。 優しい写真が涙を誘う。 領収証 タバコの銘柄 洋楽のCD 変な置物 RALPHの香水 僕が壊したカップホルダー 日帰り温泉雑誌 すべてのモノが 思い出につながる。 色々といじりながら、ふと手が止まる。 「カーナビの登録地」ピッ 「s」 …s? sってなんだ? 「詳細」 ピッ 「花盛町1丁目15番×」 …? どこだろう? 行った事がない。 親戚もいない。 ナビの登録はこれだけだ。 考えていると携帯が鳴った。 彼女からだ。 そうだ、明日会うんだ。 彼女の声。 大好きな彼女の声。 僕が親父の車にいる事を伝えると声は一層やわらかくなる。 こういう所が好きだと思う。 「明日、ドライブしよう。 花盛町に行ってみたいんだ。」 見てやろう。 親父の「花盛町」を。 . . .
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!