【Ⅰ】男娼

3/24
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「チョコレートフレーバーひとつ!」 「あいよ」 ここのジェラテリーアには毎日来る。 お気に入りは勿論チョコレート! 「はい、どうも」 「いつもありがと! じゃね、おっちゃん!」 ジェラートを手に、 キースの元へ向かった。 このジェラテリーア、 13ブロックから出て しばらく歩いた所にあるんだ。 そう遠くはない。 「よう、ロゼ!」 ブロックの入り口で 男に声をかけられた。 「あぁ…あんたか」 「おいおいなんだ、 つれない返事だな」 「生憎、 まだ今夜は気分じゃないんだ」 「気分?」 「愚問だなぁ。 セックスする気分じゃないのっ!」 「ふーん? じゃあまた後でな」 男は不思議そうな顔をして消えて行った。 まぁ不思議に思うのも無理はないか。 ちょっと前までは 淫乱って言われるくらい客取ってたしね。 実際、 俺もセックス好きだし。 でも最近、 あまり客を取る気になれないんだ。 調子狂う。 「あれ、キース?」 酒場に着くと、 もうそこに奴の姿はなかった。 「……ちぇーっ、 なんだよ」 待っててくれたっていいじゃんか。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!