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と席を譲りました。おじいさんはニッコリ「ありがとう」と朗らかに言ってくれて、私は少し嬉しくなりました。沈んだ気持ちが少し軽くなった、と思えた頃、自分が降りる停留所が近くなったので、おじいさんの横の停車ボタンを押したら、おじいさんが「次、降りるの?」と聞いてきたので、私は少しびっくりして「そうですが…?」と返すと、ギュッと、おじいさんの暖かい手が冷たい私の手を握って、「今日が貴方にとって素晴らしい日になりますように」と、笑顔で言ってくれました。私は少し呆然としてしまったけれど、降りる停留所に着いてドアが開いたので、はっとして、うまく返せたかわからないけれど笑顔で、「ありがとうございます!」と、おじいさんの手を握り返し、バスを降りました。窓からおじいさんは、ずっと手を振ってくれて、私もずっと振り返して、バスがすっかり行ってしまってから、私は涙が出ていました。嬉しくて。他人にそんな事を言ってもらえたのは初めてで。そして、自分の汚い考え方をあんなふうに綺麗に変えてくれる人がいるんだという感動で。老人に席を譲って、助ける事ができたと思ったけれど、むしろ救われたのは私でした。
人が聞けば些細な事。
けれど私には今も忘れられない宝物の出来事です。
そんな人間に自分もなりたい、心が狭く、気持ちがすさむと、その出来事を思い出し、頑張ろう!と、私は思えるんです。
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