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俺が目にしたものは、握り拳を作り、左手には長い鎖を持っていて薄茶のコートを羽織った人物だ。
辺りが暗いせいで、その人物の顔が見えない。
その人物はしゃがみこみ、俺の傷口を覗きこんだ。
「出血がひどいが……安心しろ、すぐに終わる」
その時初めてその人物の顔が見えた。
つり上がった目と無精髭と金髪が特徴的な二十代後半くらいの男性だった。
男性は立ち上がり、何かぶつぶつと呟く。
通り魔は狂ったように男に襲いかかった。
「我を脅かす存在、その全てを捕らえよ!」
男が握っていた鎖が蛇のように動き出し、あっという間に通り魔に巻きつき、動きを封じた。
通り魔は身動きがとれず、その場に倒れこんだ。
「次っと」
男は再び俺の傷口を覗き込んだ。
そして、そこに手をかざす。
男の手から、優しい光が降り注ぎ、俺の傷をみるみる治していった。
完治まで十秒かからなかった。
俺が起き上がると、男が声をかけてきた。
「運が良かったな、俺が近くにいて」
「魔術師……ですか?」
正直、俺はさっきの光景に感動していた。
かっこいい。
「おう、神楽坂魔法学園の教員の柴崎要(しばさきかなめ)だ」
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