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『…唄え』
『へ?』
『今日は、あのカス…沢田綱吉の月命日…だから…特別に許してやる』
突然の申し出に、彼女は戸惑う。
そんな姿を見て、ザンザスは柔らかに、彼女の頬に触れた。
━━━互いに微かだが震えていた。
(なんで、ボスが…?)
そう彼女は思った。
いつもは自分を乱暴に、荒々しく抱いて、弄んでいる…そんな彼が何故?と疑問符を浮かべる。
ザンザスは、悲しそうな瞳で、彼女を見ていた。
『沢田…いやボンゴレ10代目…専属歌姫の歌を俺も聴いてみたくなっただけだ…』
短く言うザンザスに、彼女は思わず笑いそうになった。
たった何秒でもなさそうな台詞一つに、彼は顔を紅くしたのだから。
意外な一面とは、これを言うのだろう…。
『じゃあ…ツナが好きだった…歌…唄いますよ?』
『あぁ…オマエに選曲は任せる』
そう言われて、小さく、ピンクのルージュが塗られた唇が動き出した。
歌声は、まるで人を惑わすセイレーンのようで…。その歌う表情はどんな女性よりも美しい…。
時折、頬を伝った涙はとても綺麗だった。
『………』
『…な、何か…言ってくださいよ…』
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