第1講 吐き気

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廊下に、教室に生徒たちが溢れる。 テストの話、テレビゲームの話、バラエティー番組の話。 そんな賑やかな会話の中を、僕は通り抜けていく。 挨拶は無い。 誰も僕に挨拶しないし、僕も誰にも挨拶しない。 ただ通り抜けた。 静かに黙って教室に入り、自分の席に座った。 別に友達がいないわけじゃない。 僕の住んでいる村には、 一緒に山へ登ったり、川で遊んだりした、 気心知れた幼なじみの友達がたくさんいる。 でも、そういう友達は地元の村立中学校へ進んで、 僕はこの学校に進んだ。 大切な仲間たちは、みんな地元に置いてきた。 だから、この場所に友達がいないのは当たり前なんだ。
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